ブタになっても知りませんことよー!

「ほらほら、圭一さん。ご飯をこぼしてますわよー!?」
沙都子の声が食卓に響く。
両親不在の夜。夕飯を作りに来てくれた沙都子との二人の食卓。
いつものことながら沙都子は自分が食べるよりも俺が食べるのを嬉しそうに眺めていて、そのくせとても口やかましい。
俺はこんな沙都子を見ているのが幸せで、その幸せを誰でもいいから自慢したくて。
……だけれども、この幸せを誰にも渡したくない。
心のどこかでそんな風に考えている自分に気づいて、そんな思考が沙都子の『にーにー』として失格なんじゃないかと少し考えてしまう。
「?どうかいたしましたの、圭一さん??」
「あ、いや……沙都子、お代り」
 内心の翳りを悟らせまいと、空になった茶碗を差し出す。
「またですの!?いくら年頃の殿方とはいえ少し食べすぎではございませんこと?
ブタになっても知りませんことよー!」
「……む。俺だっていつもこんなに食ってるわけじゃないぞ。
沙都子の飯が美味いからついつい箸が進むんだ。言ってみれば責任の全ては沙都子にある!
よって沙都子は責任を持って俺におかわりをよそう義務があるのだ!
……と、いうわけでお代り」
「わ、わけのわからない理屈をこねないでくださいましー!?
……まったく。仕方ないですわねぇ、圭一さんは」
仕方ない、といった風を装いながらも、嬉しそうに沙都子が白いご飯をよそってくれる。
それを受け取ってまたおかずと飯とを頬張ると、沙都子が笑顔で見つめていた。

――なぁ、前原圭一よ。
一体どこに答えを急ぐ必要なんてある?

俺の気持ちがにーにーとして相応しいか相応しくないかなんて問題じゃない。
沙都子の笑顔が今ここにあって、俺はそのことに幸せを感じている。
それだけで、充分じゃないのか?

「……?またどうしたっていうんですの??」
「……いや」

そう、だから今はただ。

「……ありがとうな、沙都子」



この穏やかな時間がいつまでも続きますように。





沙都子強化月間第3弾!
沙都子強化のはずなのにテキストが沙都子単体でなく圭沙都なのは気にしない!(待てい)
前回小物を描けなかったのが心残りなので今回は頑張ってみました!
小物とかの背景まともに描いたのってこれが初めてかも……疲れましたー。
明らかにゲーム中の前原家の食卓と違うのは気にしないで下さい(笑)。
ちなみに青い小鉢に入ってるのは時期的に涼味のめかぶのつもりです。
いや、もずくかもしれません(どっちだ)
とにかく!決して調理に失敗した怪しい暗緑色の物体ではありません(笑)
って、あー!?夕飯の必需品、味噌汁描くの忘れた……orz